双葉のしおり

読んだ本の感想と紹介をするブログです

道尾秀介『月と蟹』

ヤドカリを神様に見立ててライターで焼き殺すというのはいかにも呪術じみている。
「神様」に対する願い事も、嫌な奴を不幸にしてほしいとかお金がほしいだとか、(最初は)全く大したことのない願いばかり。
小さな生物をなぶり殺しにしておきながら、罪悪感であるとか、小さな命の尊さであるとかそういう部分には触れないし、物語においてもあまり重要でないという部分にゾクゾクした。

「子どもの無邪気な残酷さ」というよりも、作品全体に漂う「陰鬱さ」の一端ではないかと思う。
鎌倉の近く、海辺の町、季節は夏。
舞台はこれでもかというぐらい爽やかなはずなのに、この作品はいい意味で淀んだ海水のような雰囲気を纏っているように感じた。