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双葉のしおり

読んだ本の感想と紹介をするブログです

ハンス・ベンマン『鏡の中の言葉』

引き続きハンス・ベンマンの作品。

随所に寓話の挿入されるファンタジー。
メルヘンを寓話と訳すことについては賛否両論あろうが、『鏡の中の言葉』においてはかなり教訓的な内容のものが多いので、今回に限っては「寓話」で問題無いだろう。

実際の雰囲気としてはSFに近いようにも感じるのだが、とりあえずはファンタジーと分類しておく。

物語の舞台は、言語が政府によって制限された国。
主人公が知人に出した手紙を出版、という形式をとっている。

政府による言語の制限は「言葉の意味は必ず一つ」というものや「時制がない」など。
ただ、言語の多義性云々という問題よりは「メルヘンのない世界」を描きたかったように見える。

というのも、物語の大筋よりも間に挿入されるメルヘンのパートの比重の方が重く見えるのだ。
『石と笛』よりも『千夜一夜物語』のような枠物語の要素が強いように見える。

悔しいのは原文を読むのと訳されたものを読むのとの差があまりに大きいことだ。
「言葉」が重要なキーなのだから仕方なくはある。
訳者もさぞ苦労したことだろう。