読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

双葉のしおり

読んだ本の感想と紹介をするブログです

ハンス・ベンマン『石と笛』

小説

文庫は1、2、3上下の全4巻。
原語での出版は1983年、日本での単行本は1993年。

それぞれの巻がそれなりに厚く、かなりのボリューム。

ジャンルとしては「ファンタジー」と説明するのが無難であるように思う。
作者は『石と笛』はメルヘンでありファンタジーではないと説明しているのだが、それはガンダムのを一切知らない人に「ガンダムモビルスーツだ」であるといきなり語るようなもので、まずは馴染みのある分類に当てはめておこうと思う。

文庫版の表紙は安彦良和によるもので、カラーの口絵もある。
絵自体には何の問題もなく素晴らしいのだが、題材のチョイスが凶悪なのが玉に瑕。
表紙はまだマシだが、口絵は本編の内容のひどいネタバレで、絵が綺麗なばっかりに人目で内容がわかってしまうのが更に恐ろしい。
間違っても次の巻の口絵を確認するなんてことはしてはいけない。
まとめて4冊購入した場合は早いうちにカバーをかけてしまうのがオススメ。

物語は主人公「聞き耳」の一生をたどる。
彼は決して品行方正な人間ではなく、特に2部の展開は苦手に感じる読者もいるように思う。
個人的には3部の雰囲気や展開が好きなので頑張って読んで欲しいとは思うが……

昨今話題になるファンタジー作品に比べると全体的に古臭い印象があるのは否定出来ない。
これは翻訳物というだけではなく、『石と笛』がファンタジーではなくメルヘンだと説明される部分も要因だろう。
「メルヘン」の訳し方には色々あるが、「童話」や「寓話」とするのが無難だろうか。
良く言えばメッセージ性が強く、悪く言えば説教臭い。
1983年よりもずっと前の作品にも感じてしまう。

古めかしさとカタさ、物理的にも内容的にもずっしりとしたボリューム感を求めている人には勧めたい作品。