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双葉のしおり

読んだ本の感想と紹介をするブログです

中島京子『小さいおうち』

小説

ある一家に使えた女中の回想録。

映画は見てないですし、絵本の方の「ちいさいおうち」の内容はよく覚えてない。
たぶん昔絵本の方は見たことある……はず。


回想の合間に挟まれる現在のタキがあまりにもそれらしい雰囲気だったので、てっきり作者もそれぐらいの年齢かと思ったのだが、まだ50代と思いのほか若かった。

戦前・戦時中の都会人の生活について、かなり調べたんだなぁという印象。
ストーリーの方は、タキにも時子にもあまり共感できるような感じではなかったので、それほど没入はできなかった。


ひとり気になる登場人物を上げるとするなら、時子の友人の睦子だ。
出版社に勤める睦子は、まさに戦争を煽るマスコミ、と言ったような言動を繰り返す。
見ようによっては、いかにもろくでもないマスコミの人間だとか、周囲に振り回されるだけのミーハー女と思われてしまうだろう。

だか時子との関係を思うとなんだか物寂しさも感じる人物だ。
一度夫を亡くしてはいるものの、再婚して幸せな生活を送っている華やかな時子。
一方の睦子は、独身のキャリアウーマンで、恋人も居ない様子。

作中で睦子が時子を好きだったことはほのめかされる程度で、肝心のタキがそれをはっきりと分かってないのもいい。
想像の余地がある。
時子が夫と共に防空壕で死んだと聞いた時、睦子は何を思ったのだろうか。